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D子さんのケース

2010-02-21 15:41

じつに興味ある逆説の物語だ。東京純心女子大は東京にある大学のなかで、さほどランクの高い大学ではない。調べてみれば分かる通り、入学者の偏差値も高いほうではない。などという、その「社会通念」をひっくり返すような出来事が、足元で起こっている。
 
この「学長ブログ」でもたびたび言及したが、私たちはもともと「大学ランク」とか「偏差値」などというのはあくまでも便宜的な仕分け方法に過ぎず、教育の本質はもっと別のところにあると考えてきた。あらゆる人間に可能性を認め、その可能性を伸ばすのが教育だと考えている。若い人を偏差値や数値でランクづけるのは、本当の教育ではないと考えてきた。
 
で、D子さんの話。授業計画を立てたら、木曜日がポッカリあいてしまった。どうしましょうという相談を受けた。たまたま私が義理で授業を受け持っているよその大学があって、その授業日が木曜日。ならばそこの授業に出てみなさいよ、ということになった。そこの学生は優秀だということになっている。
 
D子さんは熱心に授業に通い始めた。優秀といわれる女子学生たちに混じって、どういうことになるのかハラハラしながら見守ることになった。ところが、である。半年もたたないうちに、授業中の受け答え、問題提起に対する反応、授業内容の理解や自分なりにまとめる力、などは200人いる学生の上位グループ(約20人)に属していることが明らかになってきた。
 
それだけではない。そちらの学生の飲み会に出ても違和感がなくなったし、キャンパスを歩けばそのまま「優秀な」学生の仲間入りである。研究発表会などにも出入りするようになり、なんと大学院生が混ざっている研究会で刺激を受けたりするようになった。
 
これにはおまけがついている。私たちの大学教員が「D子さんは急成長している。英語のまとめ方などにも構成力がついた。じつに的確で納得するような、英語でのプレセンテーションをするようになった」といいはじめた。そこで「じつは木曜日に・・・」と事情を話すと、「なるほど。それでD子さんの英語力の理由が分かった」という反応となった。
 
D子さんは知的に成長しただけではない。英語力まで身についてしまった。たぶん発音などは直しようがないが、ことばをつむぎだす力(発話力)や概念をつなぎ合わせる力(文章作成力)、物事を整理して分かりやすく表明する力(構成力)などは、本人の「成長」とともに身についていったらしい。
 
では私たちの一部にある意見、すなわち「有名大学でないから良い学生が集まらない」という言い方はいったい何だったのだろうか?
 
D子さんのケースは、「機会さえ与えられれば飛躍的に成長する」という具体例であり、その機会を与えるのが学校というものだったのではないか。偏差値がどうのこうのとか、材料が悪いからよいお料理が出来ない、などというのは教育という営みそのものの放棄なのかも知れない。教育者がみずからをネガティブな暗示にかけるような行為だったのかもしれない。
 
などと成長めざましい若い命に教えられて、こちらはこの逆説状況の中で、ただオロオロしている今日この頃でした。