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価値ある人生のために(平成23年4月5日 学長挨拶より)

新入生、編入生、研究生の皆さん、東京純心女子大学へのご入学、おめでとうございます。

 純心学園の五十数種の桜も、皆さんの入学を喜ぶかのように、徐々に咲き始めております。しかし、皆さんもご存知の通り、先の「東北関東大震災」の影響で、本学では、大学生活の最初の記念すべき「入学式」が、惜しくも予定通りにできませんでした。大震災の被害を受けられた方々、被災者学生・新入生に関わるすべての方々に、お見舞いを申し上げます。この「学長挨拶」の前に、犠牲となられた方々のために、皆様とともに「黙祷」をおささげしたいと思います。-<黙祷>-
 
夢と希望を膨らませ、ここ「東京純心女子大学」の第16期生として臨まれた、国際教養学科・こども文化学科の新入生、その他芸術文化学科を含む編入生・研究生の皆さん、重ねて「ご入学のお祝い」を申し上げます。高等学校の課程を修了され、また厳しい受験勉強を経て入学なさいました皆さんの、ご苦労とご努力に敬意を表しつつ、これまで様々な形で支え励ましてくださいました方々にも、感謝を申し上げたいと思います。
 
 私はこの4月1日より、本学の第4代目の学長として就任いたしました。皆さんは、私が学長になりまして初めてお迎えいたします「新入生」です。新入生の皆さんに先ず申し上げたいことは、本学の「教育理念」です。皆さんもすでに、「大学案内」や「ホームページ」で、本学の「教育理念」についてはお読みになり、ご理解はいただけていることと思います。
 
純心学園の創立者江角ヤス先生は「人がいやがる仕事ほど、やりがいのある仕事である」といわれ、自らも率先して「愛と奉仕」の生き方の模範を示めされました。本学の教育理念のモットーは“Sapientia in Caritate Fundata ”「愛に根ざした真の知恵」でございます。どれほど知識をもっている人でも、その人に「愛の心」がなければ、本当に価値のないものです。
 
つまり、「何を学んだかより、学んだためにどのように行動できるか」という、行動の伴う知識、しかも「愛の心に裏づけされた知識」、それこそ「知恵」なのです。真の知恵は、人間社会に直接活かされ、他人への思いやりや親切、他の人を喜ばせる心として表れるものなのです。人を喜ばせる人は、必ず幸せを呼びます。
 
創立者江角先生はある日、次ぎのようなことを仰っておられます。「私たちの心の中には、2人の人が住んでいて、『己がかわいい』という自分と、『他人を愛せよ』という自分です。そして、自分さえよければという考えと、『いや、人間たるべきは人様が大切なのだ』という心が、しょっちゅう戦っています。それで、神さまが、お喜びになる暮らし方をしようと思うなら、それ相応に努力しなければなりません。」というお言葉です。
 
私たち人間は、その戦いに勝つほど強い存在でしょうか。歩いては躓き、躓いては起き上がりながら進むのです。その支えとなるのが、純心学園の学園標語「マリアさま、いやなことは、わたしがよろこんで」という標語です。学内のあちらこちらで見かけるこの標語は、日本やブラジルの純心の姉妹校で学ぶすべての人の、「道しるべ」でもあります。キリストの母、聖母マリアの汚れ(けがれ)のない心、すなわち「純心」にささげられた学園で学ぶ皆さんも、今日から純心ファミリーの一人として、創立者が望まれた女性の一人として、学びと研究に励んでほしいと思います。
 
今、世界中の方々が、日本を見つめています。多くの痛みを分ち合って、多額の支援をしたり、多数の支援隊を送って、行方不明の捜索に当たったり、支援する物が無い国は、デモを行なって日本の復興を祈るよう国民に訴えています。また、現在被災地でなされている様々な支援活動やボランティア、その支え合いは、海外の方々の目を引くほどに、「感銘」を与えているといわれています。さらに多くのチャリティ・イベントも次々に行なわれ、世界中の人が日本のために動いています。
 
災害を乗り越えてきた歴史をもつ日本には、ともに支え合う「温かい思いやりの心」が、自然に大切にされてきました。しかし、現代社会は国を越えて人類が同じ「地球上の市民」であるということを、身をもって教えてくれています。本学でも、国を超え、地域を越えて「一人ひとりが大切に」されなければなりません。同じいのちを授かった人間として、ともに向き合い、喜びも、苦しみ、悲しみも分ち合う心を持つのが、「人間のあるべき姿」でしょう。
「共生の時代」が到来すると言われていますが、到来ではなく、むしろ忘れかけていた人間が、これに気づき始めたと言えるでしょう。しかし、一方、無縁社会、孤独死、様々な問題をかかえる現代社会の中で、私たちの「小さい愛の火」を燃え続けさせるために、自分を大きく強く成長させる必要があります。
 
人間の本当の姿は、一番苦しいときに表れるといわれます。これからの4年間には、様々な出来事があることでしょう。成人となる前の若さに溢れる「大学生」という時期は、一人ひとりの生き方が、形成される重要なときでもあります。学びのチャンスは、再度チャンスあるかもしれません。しかし時間とともに重ねて行く感情や情緒を伴う行動の歴史は、二度と帰って来ないでしょう。どうぞ、一日一日を「わたしの貴重な歴史の一ページ」とし、明日への、未来への大きな夢と希望を持って進んでください。与えられた環境の中で、精いっぱい自分自身を、磨いて行こうではありませんか。そのサポートを、心をひとつにして、してくださる先輩や教職員が、皆さんを待っています。
 
学園創立者の江角先生は、「何もしなければゼロなのです」「人生を、価値あるものにする術を、見つけましょう」など、生きることの指針を示しておられます。
ご両親から授かったこの尊いいのちを、より価値あるものにするために、自分を信じてまいりましょう。恐らく、信じてれいればできるでしょう。信じていれば何かが見えてくるでしょう。信じていれば気持ちも、心も動くでしょう。
 
人生の「晴れの門出」の節目には、「儀式」というものが、執り行われます。今日の「この日」も、皆さんがこれから生きる日々の中で、いかに貴重なものでるかを、ともに集り、確認し合い、力を分ち合うという「約束の日」です。大震災で、学びの夢を断たれた多くの若者に代わって、むしろこの記憶を、より一層「学びの力」に変えて行きましょう。今日、ここに集まることができました、新入生の皆さんが、この記念すべき日を心に刻み、「東京純心女子大学」の学生として、実りある日々を送れられることを祈り、「学長挨拶」といたします。