矢玉俊彦文庫

矢玉俊彦さんについて

矢玉俊彦さんは1996年に35歳の若さで急逝された哲学者です。上智大学で中世のキリスト教哲学、おもにトマス・アクィナスを学び、母校でラテン語の講義を担当しておられました。同じカトリックというご縁もあり、遺されたたくさんの蔵書を、この東京純心大学図書館に寄贈 していただきました。

語学に堪能で、歴史や科学などにも通じた幅の広い教養人であり、また能楽、登山、キノコの採集など、多彩な趣味を持っておられました。

矢玉さんの蔵書は、古代、中世哲学に関する文献を中心に、近現代におよぶ哲学思想の主要文献を網羅的に含んでいます。文庫、新書では古今東西の文学歴史の名著が蒐集されており、またキリスト教学や信仰に関する書物、各国語の文法書、学習書も多数含まれています。 愛書家であった矢玉さんは、本を大変丁寧に扱われ、古書以外の殆どの書物が、新品同様の状態で残されています。書き込みなどは非常に稀であり、多くの場合はメモをノートに取るか、用紙を挟み込む、といった方法がとられています。

矢玉さんは大変音楽を愛し、大学在学中は聖歌隊に所属、ルネッサンスから近現代までのクラシック音楽に幅広く通暁しておられました。他方、能楽で使われる「能管」という笛を一曾幸弘氏に師事するなど、日本の古典芸能にも 深い造詣をお持ちでした

コレクションの一部には、そんな矢玉さんの集められたCDも含まれています。クラシックがその中心で、中には珍しい輸入盤なども入っています。また、数は少ないもののビートルズやカーペンターズなどの洋楽や、日本のポップス、さらには能楽などもあって、その多彩なお人柄が偲ばれます。

(元本学非常勤講師・崎川 修)

矢玉俊彦プロフィール

1961年、東京都生まれ。
上智大学文学部ドイツ文学科、哲学科を経て、1993年上智大学大学院哲学研究科博士後期課程単位取得退学。
上智大学、千葉大学、横浜国立大学等で非常勤講師を勤める。
1996年8月、病気のため35歳で死去。

著書

『判断と存在 -トマス・アクイナス論考-』晃洋書房(没後出版)

主要論文

「反省と真理 -トマス・アクィナスの判断論」『中世思想研究』31号(中世哲学会編)
「善でなくば、善を欲せず -トマス・アクィナスによる欲求の存在論」『哲学論集』第20号 (上智大学哲学会編)
「実体と認識 -トマス・アクィナスによる自存の形而上学」『中世思想研究』35号(中世哲学会編)

翻訳

『中世思想原典集成』 共訳 平凡社
『西洋古代中世哲学史』 K・リーゼンフーバー著 放送大学/平凡社

分野別リスト

矢玉さんの蔵書は哲学関係の本を中心に、その内容は多岐にわたっています。
現在図書館では徐々に整理を進め、みなさんが利用できるようにしています。

クリックするとそれぞれの分野の書名リストがご覧になれます。